法人カードはビジネス運営において欠かせないツールとなっています。しかし多くの企業主や経営者が、その作成過程や、どのようなカードを選べば良いのかについて十分な情報を持っていません。
これから起業を考えている人、あるいはすでにビジネスを行っている人で、これから法人カードを作ろうと考えている場合、どのように進めれば効率的に最適な法人カードを入手できるのかを知っておく必要があるでしょう。
本記事では、法人カードの基本的な概念からスタートし、実際の作成手順、選び方のポイントに至るまで、詳細に渡って解説します。具体的な手続きの流れや、どのような点を重視してカードを選ぶべきなのか、ヒントやアドバイスを豊富に提供します。
目次
法人カードとは
法人カードとは、企業や団体専用に設計されたクレジットカードのことです。
一般的な個人用クレジットカードとは異なり、法人カードは主にビジネス用途で利用されます。会社名義で発行され、通常の場合、従業員や関係者が業務上で発生する各種の費用を支払うために使用します。
法人カードを導入する最大のメリットは、経費の管理が格段に効率化される点です。たとえば従業員が出張や営業活動で必要とする交通費や宿泊費などの費用を、一元的に管理できるようになります。
これにより経理部門の負担が軽減され、会計実務が効率化されます。レシートや領収書を紛失するリスクも減少するため、税務調査に備える体制も強化されることになるでしょう。
多くの法人カードには、さまざまな特典やサービスが付随しています。たとえば旅行保険、緊急時のサポート、ポイント還元やキャッシュバックなどが代表的なものです。これらの特典は、企業がビジネスを行ううえで直接的または間接的なサポートをしてくれます。
このように法人カードは利便性の高いものですが、一方で取り扱いには十分な注意が必要です。法人カードは信用枠が非常に広がるため、無計画な使用や不正使用が行われると、企業の財務に大きなリスクをもたらす恐れがあります。このようなリスクを防ぐためには、しっかりとした内部管理体制を構築する必要があるでしょう。
法人カードには多くの種類が存在します。これらは発行する金融機関やブランド、さらには提供されるサービスや特典によって分類できます。目的やニーズに応じて最適なカードを選ぶことが非常に重要です。
法人カードの4つの作成手順
法人カードを導入する際の手続きは、ざっくり列挙すると以下のようになります。
- 目的に適した法人カードの種類を選ぶ
- 手続きに必要な書類をそろえる
- 必要事項の入力手続きをする
- カードを受け取る
特別なことはありませんが、それぞれに注意点があるので、以下の解説を読んでしっかり把握しておきましょう。
①目的に適した法人カードの種類を選ぶ
法人カードには多種多様なオプションが存在します。まず考えるべきは、自社が何の目的で法人カードを利用するのかという点です。
目的に応じて選べるカードの種類はいくつかあります。
- ビジネス全般の支出に対応する基本的なもの
- 特に海外出張が多い企業向けに国際ブランドが提供するもの
- 専門的なサービスや高度なセキュリティを求める場合に適したもの
上記のように、選択肢は多岐にわたります。
たとえば海外でのビジネスが多い企業であれば、為替手数料が低く、旅行保険が充実した国際ブランドのカードが有用です。一方で国内での小規模な取引が主な場合には、手数料や年会費が低いシンプルなカードが適しているでしょう。
このように、自社のビジネスの特性や目的に応じて、最も適した法人カードの種類を選ぶことが第一歩です。カードの選定は後々の経営にも影響を与える重要な決定なので、しっかりと比較検討する時間を確保しましょう。
②手続きに必要な書類をそろえる
法人カードを申請するには、いくつかの書類を用意する必要があります。具体的な書類の内容はカード会社や金融機関によって多少異なりますが、一般的には以下のようなものが必要です。
- 会社の登記簿謄本
- 法人税の確定申告書
- 会社の決算報告書
- 代表者の身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)
これらの書類はほとんどの場合、公的機関から取得する必要があります。たとえば登記簿謄本は法務局から、法人税の確定申告書は税務署から取得可能です。各種書類の取得に関する詳細は、それぞれの公的機関の公式Webサイトで確認できます。
一般的に、これらの書類は最近3ヶ月以内のものである必要があるので、申請前に最新のものを取得しておくことが推奨されます。
③必要事項の入力手続きをする
書類がそろったら、次は必要事項の入力手続きです。手続きは、カード会社や金融機関によってはオンラインで完結する場合もありますし、一部書類を郵送で送る必要がある場合もあります。
オンラインでの申請の場合、通常は会社情報や個人情報、カードの利用目的などをWebフォームに入力します。比較的短時間で完了するプロセスですが、入力ミスがないよう慎重に行いましょう。
郵送が必要な場合は、前項で解説した必要書類とともに、申請書を送付します。申請書は通常、カード会社のWebサイトからダウンロード可能です。書類をすべてそろえたうえで、指定された住所に送付してください。
以上の手続きが正確に行われたあと、審査が開始されます。審査期間はカード会社によって異なります。一般的には数営業日から1週間程度です。申請書類や入力情報が正確であるか、カード会社ごとの審査基準に適合しているかが評価されます。
④カードを受け取る
カードの申請手続きが完了し、審査に通ったあと、法人カードが手元に到着します。実際に手元に届くまでの時間は、カード会社や金融機関、さらには審査の結果やその他の事務手続きの状況によっても変動します。一般的には、審査が無事に完了すれば、数営業日から1週間程度でカードが郵送されてくるはずです。
多くのカード会社は、カードの発送状況をオンラインで追跡する機能を提供しています。これによって、カードがいつ手元に届くかのおおよその日程を事前に知ることが可能です。
一部のカード会社では、カード到着後に確認のための電話やメールが届く場合もあります。セキュリティの一環として行われるもので、カードの到着を確認する重要な手続きの一つです。
カードが届いたら、正確に自分または会社の情報が記載されているかを必ずチェックしましょう。何らかの誤りや不備があれば、すぐにカード会社に連絡を取る必要があります。
またカードのセキュリティコードやサイン面には十分注意を払ってください。これらは個人または会社を特定する重要な情報となるため、絶対に第三者に漏らさないよう管理しましょう。
法人カードを選ぶ際のポイント
法人カードを選ぶ際には、以下の3つのポイントを確認することをおすすめします。
- 年会費の確認
- 利用限度額の確認
- 各種サービスの充実度を確認
順番に見ていきます。
年会費の確認
年会費は、法人カードを選ぶ際の基本的なポイントの一つです。年会費が無料のカードもありますが、通常何らかの制限がある場合がほとんどです。たとえば、ポイント還元率が低い、またはその他の特典が少ないといったケースが考えられます。
逆に年会費が高いカードは、多くの追加特典や高いポイント還元率を提供している場合がほとんどです。これには無料の空港ラウンジ利用、優れたカスタマーサービス、高額な購入でも安心の高い信用限度額などが含まれています。
年会費を確認する際には、単に費用だけでなく、それに見合う価値があるのかどうかもしっかり評価することが重要です。会社の予算やビジネスの規模、そして何よりも求めるサービス内容によって、最適な年会費の設定は異なります。総合的に判断することが求められます。
利用限度額の確認
利用限度額も法人カードを選ぶうえで重要なポイントです。特にビジネスで高額な支出が見込まれる場合、限度額が低いと非常に不便な状況に陥りかねません。限度額は、カード会社や申請する企業の信用状態によって異なる場合が多く、高い信用評価があればあるほど、より多くの支出が可能となる傾向があります。
一方で、無計画な支出を抑制する手段として、低い利用限度額を設定するのも一つのやり方です。
このように利用限度額は、企業のビジネススタイルや経営状況によって最適な設定が異なります。法人カードを選ぶ際には、自社の事業規模や予算、将来的な経費の見積もり等をしっかりと考慮し、利用限度額を確認することが必要です。
各種サービスの充実度を確認
法人カードの選定においては、各種サービスの充実度も大きな判断材料の一つです。特にポイント還元は多くのカードが競う重要な機能であり、これによって実質的なカード利用コストを下げることが可能となります。
一般的に、高いポイント還元率を誇るカードは年会費が高い傾向にあります。その分多くの特典や優れたサービスが提供される仕組みです。カードによっては旅行保険や緊急時のサポートなど、ビジネスにおいて非常に有用なサービスが充実しているものもあります。
たとえば出張が多いビジネスパーソンにとっては、空港ラウンジの無料利用や旅行保険が付帯しているカードは非常に魅力的なものとなるでしょう。
したがって、自社のビジネスモデルや社員の利用状況に応じて、ポイント還元以外でも各種サービスを総合的に評価し、最適なカードを選ぶことが重要です。独自のサービスや特典が豊富なカードを選べば、会社の運営もスムーズに行える可能性が高くなります。
法人カードを作成するタイミングは?
法人カードを作成するのにベストなタイミングは一概にはいえませんが、ビジネスが拡大し始め、資金の流れがより複雑になってくるタイミングでの作成が一般的です。
特に社員が増えたり、出張や購買が頻繁になったりすると、個々の経費精算よりも一括管理の方が効率的となり、法人カードが力を発揮します。
ここでは法人カードを作成するタイミングについて、2つの観点から解説をします。
起業後すぐでも作成可能
起業したばかりの段階であっても、法人カードの作成は原則として可能です。
カードの審査にはいくつかのハードルがあります。新規事業者の場合、信用情報が少ないため審査に通るのは難しいものとなるでしょう。多くのカード会社は、企業の財務状況やビジネスプラン、経営者自身の経歴などを詳細に審査します。その点で新規事業者は実績がなく不利です。
審査の種類によっては、新規事業者でもスムーズにカードを取得できる場合もあります。多くの場合においては、設立から一定期間が経過していない、または利益が安定していない企業はカードを発行してもらうのが難しい傾向にあります。
そのような場合には、信用担保となる資産や、他の信用機関からの推薦などが求められることもあるでしょう。
起業直後に法人カードの作成を検討する際は、審査の種類と必要な条件を事前にしっかり確認しておくことが重要です。
設立年数や決算期数などを確認しよう
カードによって審査基準は異なりますが、企業の設立年数や決算期数は、一般的にカード発行において非常に重要な要素とされています。
設立から時間が経過している企業や、安定した決算状況を有する企業は、信用面で評価が高く、審査がスムーズに進む可能性が高いと考えられます。一方で、新設企業や決算状況が不安定な企業は、通常よりも厳しい審査基準に直面することが考えられるでしょう。
設立年数が短い、または決算が少ない企業でも、その他の信用情報や財務状況、ビジネスプランがしっかりしていれば、カードの発行は不可能ではありません。ただしこのような状況では、より高い年会費を課される可能性や、利用限度額が低く設定される可能性も考慮に入れる必要があります。
法人カードを作成する際には、信用情報機関やカード会社の公式Webサイトで、審査に関する詳細情報を集めておくことが推奨されます。選ぶカードによっては独自の特典やサービスがあるので、それらも合わせて比較検討するとよいでしょう。
法人カードの審査で気をつけるべきポイント3つ
法人カードの審査において気をつけるべきポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
- 信用情報
- 経営状況
- 事業の継続年数
いずれも重要なものばかりなので、以下の解説を読んできちんと把握しておきましょう。
信用情報
信用情報は、法人カードの審査で最も重要な要素です。企業が過去に借入や支払いで遅延などの問題を起こしていないか、正確な財務報告が行われているかなどが詳細に調査されます。信用情報機関からのレポートがしばしば参照され、これが審査に大きな影響を与えます。
よい信用情報を維持するためには、税金や社会保険料、その他の公共料金の支払いを遅らせないよう注意することが不可欠です。既存の借入やクレジットカードの利用状況も影響を与えるので、これらの管理にも注意を払いましょう。
信用情報は企業全体の信用性を表すものなので、これを高めるためには経営者自らがしっかりとした財務管理を意識する必要があります。
経営状況
経営状況もまた、法人カードの審査において非常に重要な要素となります。
申請する企業の財務状態や収益性、業績などは、発行会社によって詳細にチェックされます。特に、企業が安定した収益を上げているか、キャッシュフローが健全であるかといった点は、信用力を測る上で重要な指標です。
直近の事業成績や決算報告書、財務諸表などは通常、審査の過程で提出する必要があります。これらの書類が明確で、良好な経営状況を示している場合は、審査もスムーズに進む可能性が高まるでしょう。
反対に、不安定な経営状況や赤字が続いている場合には、審査に通過するのが難しくなる恐れがあります。
事業の継続年数
事業の継続年数は、企業の安定性や成長性、信用力を一定程度反映する指標とされています。新設の企業や事業を始めたばかりの場合には、信用の蓄積に乏しいため、審査は厳しくなりがちです。
反対に、継続年数が長く、その間に安定した業績を上げているのであれば、それらの要素は審査において有利に働きます。多くのカード発行会社は、安定した経営を長く続けている現実を鑑みて、信用限度額や利用条件を設定するからです。
企業としての歴史が長く、良好な信用情報と経営状況が続いているのであれば、より好条件で法人カードを取得できる可能性が高いといえるでしょう。
まとめ
法人カードの取得は、ビジネスを効率的に運営するうえで非常に有用な手段です。
法人カードの選び方や審査には多くのポイントが存在します。カードの種類を選定することから始まり、必要書類の準備、申請手続き、審査に至るまで、計画的に進めることが重要です。
特に審査での信用情報や経営状況、事業の継続年数などは重視される要素であり、これらをしっかりと準備・対策することでスムーズな審査が期待できます。
年会費や利用限度額、サービスの充実度など、カードによってさまざまな特徴があるため、自社のニーズに最もあったものを選びましょう。新規事業者でも早いうちから法人カードの準備を考えることが、財務管理やビジネス運営においてはプラスに働きます。
法人カードの作成について何か疑問点や不明点がありましたら、ぜひ弊所・かなで税理士法人までお問い合わせください。法人カードの選び方や使い方に関する専門的なアドバイスを、豊富なノウハウに基づいて提供させていただきます。
かなで税理士法人
代表税理士
青山学院大学経営学部卒業後、2019年にかなで総合会計として独立開業。2024年にかなで税理士法人を設立。税理士事務所や一般企業の中で税務・財務・労務を行った経験を活かして、スタートアップ企業から中小企業の経営基盤構築のアドバイスまで幅広く業務を行う。
かなで総合会計はお客様と志を共にすること、そしてお客様の夢をかたちにするために日々サービス展開を行っている。起業・会社設立を一つの強みとし、創業融資などの資金調達支援や助成金・補助金のアドバイス業務も行っている。