「会社を設立したいのだけど、具体的にどうすればいいのだろう」
「会社を設立するメリットとデメリット、どちらが大きいのだろう?」
このような悩みを抱えている方は少なくないことでしょう。
会社を設立することは、個人事業主として活動している方や、新たにビジネスを始めたいと考えている方にとって、多くの期待と不安がともなうものです。
会社を設立することで得られるメリットは数多くありますが、反面デメリットも存在します。また、設立する会社の種類によって、かかる費用は異なってきます。一通りの知識を身につけたうえで判断しなければいけません。
本記事では、具体的な会社の作り方を解説するとともに、設立にかかる費用やメリット、デメリットなどについて詳しく解説します。
目次
個人事業主が会社を作るメリット
個人事業主が会社を設立することのメリットとしては、主に上記の3つが挙げられます。いずれも重要な要素であるため、以下の解説を読んでしっかり把握しておきましょう。
信頼を得やすくなる
会社を設立し個人事業主から法人成りすることで、事業の信頼性が大きく向上します。会社名義での契約や取引は、個人名義に比べて安心感を与えるからです。
特に大企業や公共機関との取引においては、信頼が重要視されます。法人として認識されることで、信頼できるビジネスパートナーとして取引をしてもらえるでしょう。
また、会社を設立することで、従業員の採用や人材の確保がしやすくなります。多くの人は、安定した雇用環境を求めることが多いため、法人化することで求人活動を効果的に行えるからです。特に長期的な雇用を希望する人材に対して、法人としての安定感をアピールできるのは大きなメリットです。
さらに、法人化によって経営の透明性が高まる点も、信頼性向上に役立ちます。特に株式会社は、決算公告が義務付けられており、外部から評価がしやすい点が特徴です。投資家や取引先に対して透明性を示すことで、より深い信頼関係を築くことに繋がります。
節税できるケースがある
個人事業主の場合、最高税率は45%です。一方、普通法人の場合は最高で23.20%です。
また法人は、経費として認められる範囲が広がるのも特徴です。例えば以下のようなものです。
- 役員報酬
- 退職金
- 福利厚生費
個人事業主では経費として認められない項目も、法人では経費に計上できる場合があるのは、大きなメリットです。
さらに、赤字の繰越控除ができる期間が長いことも特長です。青色申告の場合、個人事業主なら3年、法人なら10年間繰り越すことができます。過去の赤字を将来の黒字と相殺することが可能となるため、初期投資に大きな赤字が発生する事業に挑戦しやすくなるでしょう。
No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁
資金調達しやすくなる
法人化することで信用力が向上し、銀行や投資家からの資金調達が容易になります。法人としての実績が積み上がっていくと、信用力はさらに高まり、より有利な条件で融資や投資を受けられるようになるでしょう。
金融機関からの融資は、法人のほうが審査において、有利な条件が適用されることが多いといわれています。例えば融資の金額が大きくなったり、金利が低く設定されたりすることがあるのです。法人のほうが、事業の継続性や成長性が高いとみなされるからです。
さらに株式会社の場合は、株式発行を通して資金を調達することも可能です。株式を発行することで、多くの投資家から資金を集められ、新しいプロジェクトや事業の拡大を迅速に進めやすくなります。
個人事業主が会社を作るデメリット
個人事業主が会社を設立することにはメリットがたくさんありますが、デメリットもいくつか存在します。例えば上記のようなものです。
会社設立時に費用がかかる
会社を設立する際には、設立する会社の種類に応じて費用がかかってしまいます。
例えば株式会社の場合、法務局に提出する登記申請書には登録免許税が必要で、最低でも15万円必要です。合同会社では最低6万円と比較的低いものの、どちらにしても費用がかかることに変わりはありません。
定款の作成や公証人役場での認証費用も必要です。定款の認証には3~5万円、紙の定款であれば収入印紙代として4万円が追加で必要になります。
資本金の確保も忘れてはいけません。現在の会社法では資本金1円からでも会社を設立できますが、これでは信頼を得ることは困難です。資本金が極端に低いと、事業の継続性が疑われます。そのため、会社を設立するのであれば、ある程度の資本金を用意することは現在においても必要です。
会社を設立したあとにも、さまざまな費用が発生します。法人税や法人住民税などを納めなければいけませんし、税務申告のための会計事務所への依頼費用や社会保険への加入なども忘れてはいけません。
会計処理が煩雑になる
個人事業主と比べると、会社は会計処理がより煩雑になります。個人事業主の場合、確定申告に必要な会計処理は比較的シンプルです。しかし会社を設立すると、法人税申告書や決算書の作成が必要です。これにより事務作業が複雑化します。
また、従業員を雇う場合、社会保険や労働保険などの煩雑な手続きが発生します。保険料の計算や支払いなどが日常的な業務に加わるため、個人事業主と比べて負担が増大するのが一般的です。
現在作れる会社の種類
現行の会社法において設立できる会社の種類は、以下の4つです。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
それぞれの特徴があり、設立者の具体的なビジョンによって理想の会社形態は異なります。以下で詳しく解説します。
株式会社
株式会社は、日本において最も一般的な形の会社です。最大の特徴は、出資する者と経営する者が異なる部分にあります。
出資者は株主であり、実際に経営を行うのは取締役です。所有者である株主たちが株主総会を開き、任命された経営者が実際に事業を運営するという構造になっています。「所有と経営の分離」と呼ばれています。
株式会社の設立は、まず発起人が定款を作成し、公証人役場で認証を受けることから始まります。次に会社の基本情報を法務局に提出し、登記を行います。登記が完了すると、正式に株式会社として活動が始まるという流れです。
合同会社
合同会社は、2006年に施行された新会社法により創設された比較的新しい形の会社です。設立手続きが比較的簡単で、費用も株式会社と比べると低く済むのが一般的です。
合同会社を設立する際には、公証人役場で定款を認証してもらう必要がありません。また、登記にかかる登録免許税も、株式会社の半分以下である6万円からとなっています。
合同会社は、出資者が有限責任を負う点で株式会社と似ていますが、株式の発行は行いません。出資者全員が経営に参加できる点が大きな特徴であり、柔軟な経営体制が可能です。例えば利益配分や意思決定の方法を定款で自由に決められるため、出資者間の合意に基づいた経営が行えます。
合資会社
合資会社は、出資者が有限責任社員と無限責任社員で分かれる形の会社です。有限責任社員は出資額の範囲内で責任を負い、無限責任社員は会社の債務に対して無限に責任を負います。
合資会社のメリットは、設立費用が低く、手続きが簡単な点です。一方でデメリットとしては、無限責任社員のリスクが大きすぎることが挙げられます。
無限責任社員のデメリットが大きく見られることが多く、合資会社は現在会社を設立する場合には、あまり選ばれません。
合名会社
合名会社は、出資者全員が無限責任を負う形の会社です。無限責任社員とは、会社の債務に対して無限に責任を負うことを意味します。会社が負った債務については、個人の財産を持ってすべて返済しなければいけません。
無限責任であるため、合名会社は出資者同士の強い信頼関係が必要とされる会社形態です。
メリットとしては、設立費用が比較的安い点が挙げられます。
合名会社も合資会社と同じく、現在において会社を設立する際に選ばれることはあまりありません。新たに設立される会社の多くが株式会社か合同会社です。
会社の作り方
会社を設立する手順は、例えば株式会社においては以下のようになります。
- 会社の基本情報を決める
- 定款を作成する
- 定款の認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 登記申請する
1つずつ解説します。
会社の基本情報を決める
まずは、会社の基本情報を決める必要があります。最初に決定しなければならない情報としては、以下のようなものがあります。
- 会社の名称
- 事業目的
- 本店の所在地
- 役員構成
- 資本金の額
会社の名称を決める際には一定のルールに従う必要があり、例えば商標権を侵害しない名前にするなどを考慮する必要があります。事業目的は会社が行う事業の範囲を定めたもので、将来的にやりたい事業も含めて記載しましょう。
本店の所在地とは、会社の本拠地となる住所のことです。自宅でもバーチャルオフィスでも問題ありません。役員構成は、取締役を1人決めれば問題ありません。1人で会社を作る場合は、自分を取締役にしましょう。
資本金の額は、会社設立にあたって出資者から払い込まれるお金を指します。会社を立ち上げた当初の運転資金の基礎となります。
定款を作成する
会社の基本情報がまとまったら、次に定款を作成します。定款とは、会社の基本的なルールや運営方針を定めた文書のことです。会社法によって定められた事項が記載されていなければいけません。定款に記載する内容は大きく分けて、以下の3つがあります。
絶対的記載事項 | 会社の名称、事業目的など |
相対的記載事項 | 設立費用など |
任意的記載事項 | 株主総会の開催規定など |
定款の認証を受ける
株式会社の場合、定款を作成したら公証人役場で認証を受ける必要があります。定款の認証とは、公証人が定款の内容を確認し、正当な手続きにより定款が作成されたことを証明する手続きです。
定款認証を受けるためには、作成した定款など必要書類を準備して、公証人役場に提出します。事前に、本店所在地を管轄する公証役場の予約を取っておきましょう。
なお、定款認証はオンラインで申請することも可能です。オンラインを選択すれば収入印紙代の4万円がかかりません。
資本金を払い込む
定款の認証を受けたら、資本金を払い込む手続きを行います。定款に記載された通りの額を必ず払い込まなければいけません。
資本金の払込は、発起人の個人口座に対して行うのが一般的となっています。会社を設立するまでは、会社名義の口座を開設できないからです。発起人のうち1人の銀行口座に資本金を振り込み、通帳のコピーを証拠として保管します。
登記申請する
資本金の払込が完了したら、法務局で登記申請を行います。会社設立の最終ステップであり、登記が完了することで会社は正式に法人格を取得します。
登記申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑登録証明書
- 資本金の払込があったことを証する書面
- 印鑑届出書
- 登記すべき事項を記載した書面または保存したCD-R
申請の内容に不備がなかった場合、10日ほどで登記が完了します。不備があった場合は法務局から連絡が届きます。
会社の作り方に関するよくある質問
会社の作り方に関するよくある質問に回答します。
会社は1人でも作れる?
株式会社・合同会社・合名会社の3つは1人でも作ることが可能です。1人で設立する会社のことを通常「一人会社(いちにんがいしゃ)」と呼びます。
1人で設立するからといって、特別にやらなければいけないことはありません。通常の会社設立と同じことを、自分だけで実行します。
資本金はいくらがいい?
資本金は、3~6ヶ月程度の運転資金を目安にするといいでしょう。適切な資本金の額は、事業の運営資金や信用力を考慮することが重要です。
なお、2021年の総務省・経済産業省のデータによると、資本金で最も多いのは「300万~500万円未満」でした。
参考:経済センサス‐活動調査 令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計 |e-Stat
会社を作るならかなで税理士法人にご相談を
設立手続き自体は法的に定められたプロセスを順に進めるだけですが、実際には多くの専門知識や時間が必要です。
会社の基本情報を決定し、定款を作成し、公証人役場で認証を受ける手続きは、初めて会社を設立する方にとって負担となるでしょう。
会社を作りたいと考えている方は、ぜひ「かなで税理士法人」までご相談ください。
かなで税理士法人は、会社設立のプロセスをワンストップでサポートいたします。長年の経験と豊富な知識を持ったスタッフが、お客様の会社設立をスムーズに成功へと導きます。LINEやChatwork、メールから相談可能なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
かなで税理士法人
代表税理士
青山学院大学経営学部卒業後、2019年にかなで総合会計として独立開業。2024年にかなで税理士法人を設立。税理士事務所や一般企業の中で税務・財務・労務を行った経験を活かして、スタートアップ企業から中小企業の経営基盤構築のアドバイスまで幅広く業務を行う。
かなで総合会計はお客様と志を共にすること、そしてお客様の夢をかたちにするために日々サービス展開を行っている。起業・会社設立を一つの強みとし、創業融資などの資金調達支援や助成金・補助金のアドバイス業務も行っている。